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つけもの石の、なにがイヤかというと、それはまず、あのニオイです。色白のわたしの肌を、みどり色やあめ色に変える、漬け汁です。たくあんの桶に入れられたら最悪です。からだに付いたコヌカが乾いてカピカピになったり…。いいですか?乾くときって、やっぱり肌がツレるんです。そしてかゆくなる気がする。まあ、あくまで「そんな気がする」だけですけどね。 ずいぶんくわしいって?そりゃそうですよ、実は前にいた上流にも、やっぱり人家は少しですけどあって、わたしはそのうちの一軒の農家に七年いたんです。七年ていったら、そのまま川の中にいたら3ミリは軽くなってましたね。ニオイが強いからずーっと不眠症に悩まされて、夢の中でもニオイがあるんです。 七年…。七年の間、わたしが見たものは、つけもの小屋の天井と、わたしを拾ってきたおばあさんと、その家の白猫くらいでした。時々、つけもの小屋のちいさな窓から吹く新鮮な風のにおいや、陽をうけてキラキラ光る葉っぱと、その枝に時折やってくる小鳥と、そんなものがわたしのすべてでした。 おばあさんは、わたしのあつかいは丁寧にしてくれたので、最初より少し、好きになりました。一番気持ちのいい季節は、もう山のてっぺんに雪が降るくらいになったころ。 秋のある日、わたしは年に一度だけ、いきおいよく流れる井戸水で洗ってもらえるのです。おもての光りもまぶしくて、それにおばあさんは、かたいタワシでわたしをゴシゴシ洗ってくれるんです。痛かないですよ、私は花コウ岩ですからね。それより、それだけ強く洗ってもらえると、表面がすこしうすくなるんです。透明になるのとは、すこし違うけど。それでもここちよく疲れて、さっぱりして、その日の夜だけは、ぐっすり眠れるんです。花コウ岩はみんな、眠るのが大好きなんです。 翌日はまた、新漬けの上にすわることになるんですけどね。 そうして七年、そのおばあさんのところですわってました。 #
by ha-chi-3
| 2014-09-25 04:51
| おはな・し
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